エアバッグ(Airbag)とは主として内部にて火薬を爆発させることによって生じた気体をバッグに送り込むことによって衝撃を吸収する装置のこと。
身近なところでは自動車の乗員保護システムの中の1つとしてエアバッグがあり、SRSエアバッグシステム(SRSはSupplemental Restraint System(補助拘束装置)の略)と呼ばれる。Supplemental(補助)とあるように、エアバッグはあくまでシートベルトをしていることを前提として作られている乗員保護システムの1つである。
初期には運転席にしか存在しなかったが、現在では助手席、側面からの衝突に対応するサイドエアバッグやカーテンエアバッグ、膝にかかる衝撃を緩和するためのニーエアバッグなどがある。(標準装備かオプションかは車両によって異なる)
オートバイ・自転車のライダー用や歩行者用のエアバッグも販売されている。また、火星探査機が火星に着陸する際にエアバッグを利用して着陸するなど、さまざまな方面で衝撃吸収のために利用されている。
[編集] エアバッグの仕組み
通常、袋体はコンパクトに折り畳まれてスマートに持ち運びができ、いざというときにはその中に気体を入れ、空間の許す限り対象物に相当した大きさに膨張させ、衝撃から対象物を守る。この一連の動作は、おそらく、人が日常接する風船のイメージにより、多くの人に良いイメージをもって歓迎される。
適した容積を持つ袋体に対象物が衝突する際、袋体内部の気体を外部に放出、もしくは内部で移動させることにより、衝突時の対象物に発生する衝撃を吸収(または緩和)する。
技術者でありアメリカ海軍に所属していたJohn W. Hetrickは、現在のエアバッグにあたる安全クッションを1952年に設計し、翌年1953年に特許を取得した。彼は魚雷で用いられている空気圧縮技術を応用して、自動車事故の安全性を高めることを思いついた。Hetrickはアメリカの自動車会社でも働いていたが、会社側は彼の発明を製品化することに興味を示さず、この発明から10年以上たつまで市場に出ることはなかった。
Allen K. Breedは衝突検知の技術を発明し、開発した。Breedコーポレーションは、1967年にこの技術をクライスラーの車に搭載し初めて市場に出た。同様の衝突抑制器"Auto-Ceptor"はEaton, Yale と Towne Incによって開発され、フォードに搭載された。この技術はすぐにアメリカで自動車安全システムとして販売された[1][2]。一方、イタリアのEaton-Liviaカンパニーはこれを改良したローカライズされたエアバッグを販売していた[3]。
日本でのエアバッグの発明は1963年に遡る。特許申請事務代行業のGIC(グッドアイデアセンター)を経営していた小堀保三郎が、航空機事故などで、衝撃を緩和させ、生存率を改善させる装置として考案した。後に一般的に搭載されるようになったエアバッグではあるが、当時としてはあまりに奇抜な発想だったため、発表の場では、日本人の関係者からは失笑を買い、相手にされることはなかった。また、エアバッグが、火薬の使用が当時の日本の消防法に抵触してしまうことから、日本でエアバッグが開発されることはなかった。一方、欧米の企業では、エアバッグの研究、開発が進められ、それにあわせて法規も整えられていった。開発が進むにつれ、その有用性が認められ、1970年頃からは日本でも本格的な開発が始まった。現在� �エアバッグは、世界中の自動車で、ほぼ標準装備となっているが、小堀が特許を有していた間は、実用化されていなかったため、特許による収入がなく、研究費などで借金を抱えていた。なお小堀はエアバッグの世界的な普及を知ることなく、1975年8月30日、生活苦から夫婦でガス心中を遂げている[4]。
エアバッグが最初に実用化されたのは、1970年代中盤のアメリカにおいてである。当時のアメリカにおいては車に対するロマンがなくなるという理由で、シートベルトの着用を法律で義務付けることに対して世論などから反発があった。そのため、シートベルトをしないでも死なないシステムを作るということがメーカーに課せられた課題となった。1971年、フォード社が顧客の車両にエアバッグを取り付け、モニター調査を行った。1973年にはゼネラル・モーターズ(GM)が、キャデラック、ビュイックなど数車種の量産車での装備を可能とした(ただし、エアバッグの誤作動による事故が発生したため1977年に生産中止している)。
1980年にはメルセデスベンツが、高級乗用車Sクラスにオプションとして装備した。メルセデス・ベンツが開発時に取得した特許は、安全はすべてのメーカーが享受すべき、の信念のもと、無償で公開された。初期のエアバッグは、一部の限られた高級車にオプション装備として搭載されるのみであったが、次第に乗用車のほとんどでオプションとして搭載されたり、上級モデルには標準装備されたりするようになった。一時期、エアバッグ設定の無い自動車でも装備できるよう、後付の機械式エアバッグ(レトロフィット エアバッグ)を製造・販売した会社もあったが、あまり売れず、現在は入手不可能となっている。そのため、ユーザーが、自らの好みに合わせて汎用の市販ステアリングホイールにに変更した場合、原則として運転席エアバッグが装備できない事になる。[5]
日本車初のエアバッグ搭載市販車は、1987年にホンダが発売したレジェンドである(運転席のみ)[6]。日本車では1990年代中盤から急速に普及した。
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